芳一は墓地で琵琶を鳴らして、物語を語っていました。
芳一は目が見えないが鬼も感動させるような弾き語りができる琵琶法師です。
異国の話でさえも魅力を伝えることができるほどの。
芳一の元へ、男性がやってきて、毎晩平家の物語を語るように言いました。
それから、芳一は2日間夜一人で物語を紡ぎました。
いっしょに住んでいる人が毎晩出かけている芳一が気になって見に行ったところ芳一は亡霊に憑りつかれていました。男性は平家の落ち武者だったのです。
和尚さんにそのことを相談すると今日の夜には芳一にとり殺されてしまうことが分かりました。
和尚さんは芳一を亡霊から守るために体中にお経を書きました。
和尚さんは芳一に
「お経の力によって亡霊から芳一の姿が見えることはなくなった。しかし、声は聞こえてしまうため決して声は出さないように」
と伝えました。
その夜、亡霊が芳一の命を奪うために訪れました.しかし、耳しか見つけることはできませんでした。
「しかたない、耳だけ貰っていこう」
と亡霊は
バチン
と大きな音を立てて芳一の耳を千切りとりました。
和尚さんは芳一の耳にだけお経を書くのを忘れてしまったため亡霊から見えてしまっていたのです。
芳一は耳を失ってしまいましたが、亡霊が訪れることはなくなりました。
このことから芳一は耳なし芳一と呼ばれるようになりました。
様々な人が各地から芳一の琵琶を聴きに来るようになり、芳一は好きな琵琶を弾いて余生を過ごしました。
紹介:清川優衣