大きいものと小さきもの

中国名:逍遥遊

昔の中国は、たくさんの国王が権力のために戦っていて、人々は安心して生活できな
かった。荘子という人は、この厳しい状況を見て、「平和がほしいのう。何かいい方法
はないだろうか。しかし、私は一般の人間だし・・・」そこで、「物語を語ろうではな
いか。みな、物語が好きじゃろう。物語を伝えれば、戦争をやめるかもしれん」と考え
た。

荘子の物語がはじまる。

 この世界の北の方の海に大きい魚がいる。その名は鯤という。この巨大な魚が、姿を
変えて巨大の鳥となる。その名は鵬という。鵬が空を飛べば、その翼の大きいこと、ま
るで青空を覆う雲のようだ。鵬は海の強風に乗って、九万キロメートル南の方の海まで
飛ぶ。「南の果ての海」とは天の池である。

 鵬が空を飛ぶとき、地上にいたら見られないうつくしい景色を見た。鵬が「うつくし
い眺めだ。これは自由の真実なのか」と考えた。

 それを見て、スズメが鵬を笑った。「あいつはなぜこんな高いところを行くのか。お
れは力いっぱい跳ねて飛び上がって、草のしげみの中を自由に遊ぶ。それでもう十分だ
よ。鵬は間抜けだな。」

 しかし、これはおかしなことである。草の茂みでしか遊べないやつが、空を自由に飛
び回れる鵬を笑うなんて。       

 物語はここで終わった。そして、荘子がこう反問した。

 「今の官僚や国王たちが、幸福や本当の自由をよそに争いあっている。恵まれた生活
を送っていたが、実は茂みの中を遊んでいるスズメみたいに、権力や野心の虜に過ぎな
いのではなかろうか。たとえ権力や名誉の追求をやめても、ありのまま生きれば、大空
を飛ぶ鵬のような、本当の自由や幸福を手に入れられるのじゃ。」

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紹介:コガイ

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