芳一は墓地で琵琶を鳴らして、物語を語っていました。芳一は目が見えないが鬼も感動させるような弾き語りができる琵琶法師です。異国の話でさえも魅力を伝えることができるほどの。芳一の元へ、男性がやってきて、毎晩平家の物語を語るように言いました。それから、芳一は2日間夜一人で物語を紡ぎました。いっしょに住んでいる人が毎晩出かけている芳一が気になって見に行ったところ芳一は亡霊に憑りつかれていました。男性は平家の落ち武者だったのです。和尚さんにそのことを相談すると今日の夜には芳一にとり殺されてしまうことが分かりました。和尚さんは芳一を亡霊から守るために体中にお経を書きました。和尚さんは芳一に「お経の力によって亡霊から芳一の姿が見えることはなくなった。しかし、声は聞こえてしまうため決して声は出さないように」と伝えました。その夜、亡霊が芳一の命を奪うために訪れました.しかし、耳しか見つけることはできませんでした。「しかたない、耳だけ貰っていこう」と亡霊はバチンと大きな音を立てて芳一の耳を千切りとりました。和尚さんは芳一の耳にだけお経を書くのを忘れてしまったため亡霊から見えてしまっていたのです。芳一は耳を失ってしまいましたが、亡霊が訪れることはなくなりました。このことから芳一は耳なし芳一と呼ばれるようになりました。様々な人が各地から芳一の琵琶を聴きに来るようになり、芳一は好きな琵琶を弾いて余生を過ごしました。 紹介:清川優衣
むかしむかし、吉四六(きっちょむ)さんと言う、とてもゆかいな人がいました。吉四六さんは、この頃、妙な事ざるにウマのふんを入れて、川にさらして洗っているのです。そして洗い流すと、ざるの中にいくらかのお金が入っています。 吉四六さんは、ざるにお金を入れたまま、見せびらかすように帰っていきました。さあ、それを見た人たちは、みんな吉四六さんのウマがほしくなりました。そして吉四六さんに売ってくれと頼むも断られ続けました。そしてとうとう、うわさを聞いた町一番のウマ買いがやってきました。ウマ買いは大金を出し、吉四六さんはウマを渡しました。しかし、ウマはお金のふんを出さないのです。 困っている馬買いを見て吉四六さんは、その餌に金は入っているのかと聞きました。余計に困っている馬買いに吉四六さんは言いました。 「この世で一番上等なえさは、お金入りのえさだ。それさえやれば、ウマはお金の入ったふんをするよ」 紹介:江原拓郎
昔々、心の優しいおじいさんと欲張りなおばあさんがいました。おじいさんは雀を大事に飼っていました。おじいさんが出かけたある日雀はおばあさんが作ったノリを食べてしましました。起こったおばあさんは雀の舌をはさみで切って、外へはなしてしましました。それを聞いたおじいさんは心配して雀を探しに行きました。おじいさんが藪の奥に雀たちの宿を見つけました。雀は廼利を食べてしまったことを謝り、自分を探してくれたおじいさんに感謝を伝えました。雀たちはおじいさんに御馳走を用意し歌や踊りでもてなしました。その後お土産として雀は大小2つの箱を用意しました。おじいさんは年を取っているかと小さい箱を持ち帰りました。家に帰って中身を見てみると金銀、宝石が詰まっていました。それを見たおばあさんは雀の宿に行き大きな箱を強引に受け取り帰り道の途中で箱を開けてしまいました。すると、箱の中から怪物が出てきておばあさんは腰を抜かしてしましました。 紹介:川原千尋
昔、日本を作ったイザナギとイザナミという神様がおりました。しかし、イザナミは火の神を生むときに焼け死んでしまいました。悲しみに暮れたイザナギは黄泉の国へイザナミを迎えに行きました。イザナミは扉の向こうから、黄泉の国の神様に頼んでみるが、決して中をのぞかないでほしいと言いました。イザナギはしばらく待ち続けましたが、イザナミはでてきませんでした。しびれを切らしたイザナギは約束を破り、扉を開けました。そこにいたのは醜い姿となったイザナミでした。イザナギは思わず逃げ出し、姿を見られたイザナミは怒ってイザナギを追いかけます。無我夢中で逃げたイザナギは、黄泉の国の入り口を大きな岩で塞ぎました。岩の向こうから「愛する夫よ、私にこんな仕打ちをするのならば、私はあなたの国の人を毎日1000人殺そう」とイザナミが言いました。それに対してイザナギは「愛する妻よ、それなら私は、毎日1500人の人が生まれるようにしよう」と返しました。このようにして、日本では、人間の生と死が始まったのです。 紹介:中原孝