子どもの頃、近くの公園には毎週のように紙芝居のおじさんがやってきていた。私は東京の下町に住んでいたことから、数少ない紙芝居師が活躍していた。彼らは子どもたちに小さな夢と駄菓子を売る芸人だったが、高齢化とともに姿を消してゆき、小学校の高学年の頃には、もうその姿を見ることはなかった。記憶の底に眠る紙芝居はどこかぼんやりとした色彩に包まれており、教育的効果とは無縁の子どもの遊びが拡がる世界だった。